富士ゼロックスの版画コレクションと横浜美術館のコレクションの中から、ヴァルター・ベンヤミンの言うところの「複製技術時代の芸術作品」について。
技術の発展とアウラの変容。
富士ゼロックスがこれほどまでに網羅的な、充実した版画・写真・ゼログラフィーによる作品のコレクションを持っているということを今回の展示で初めて知った。
横浜にある会社ビルの中にアートスペースも持っているという
第1章 写真の登場と大画家たちの版画
展示はウジェーヌ・アジェのパリの写真に始まる アジェはあくまでも資料としてパリを写真に収め続け、二束三文で画家たちに売った
ベンヤミンはアジェの撮る都市写真をまるで犯行現場の写真のようであると評し、中平卓馬は事物が眼に突き刺さってくると評した
会場に、アジェの撮ったPont Marieの写真が展示されていた
私は去年初めてパリに行くまでは、アジェの写真を通してパリを知っていたが、実際に訪れてみて初めてベンヤミンの言わんとすることが少し理解できた気がした
Pont Marieは小さな可愛い橋
アンリ・マティスの詩画集『ジャズ』やパブロ・ピカソのエッチング作品も展示されていて、もうこの時点で「富士ゼロックスコレクションすげえ」という気持ちになっていた
第2章 普遍的スタイルを求めて
ダダについて。バウハウスについて。 美術の教科書のようだと感心した。ベストアルバムみたいというか
クレーやモホイ=ナギやカンディンスキーに混ざって展示されているアウグスト・ザンダーの人物写真が良かった。
あとロトチェンコの写真が好きなので色々展示してあって嬉しかった。
第3章 変容のイメージ
シュルレアリズムについて。これも教科書みたいにおさえるべきところをおさえてあった ベンヤミンが言うところの「複製可能性に狙いを定めた」作品
マックス・エルンストの『Maximiliana, ou l'exercice illégal de l'astronomie(マクシミリアーナ、または天文学者の不法行為)』が展示されていてそれがとても良かった。
学位がないために冷遇された天文学者で詩人で、天体観測を"見る芸術"と呼んだテンペル・エルンストを讃えた版画集。
これが観れただけでもこの展示に来てよかったと思った

秘密文字が好き
美しい

文字、美しい
テンペルが肉眼で発見したという星雲や惑星のことを考えた
その孤独についても
そういえば横浜美術館で数年前にマックス・エルンストの個展があったな。
他にもコラージュ作品も数点展示されていた。
彼のコラージュは秩序のある狂気が小さいサイズの画面に満ちていて好き。
カルメル修道会に入ろうとしたある少女の夢とか。
あとなんかオシャレなエロ本みたいなのが展示してあるなと思ったらポール・エリュアールの詩とマン・レイの写真による詩画集だった
第4章 大量消費時代にむけて
ここはあまり興味がなかった。 ウォーホル、リキテンスタイン、オルテンバーグらのポップアートと全然スタンスの異なる荒川修作の作品が並べて展示してあるのはちょっと面白かった
第5章 ゼログラフィーと美術家
ゼログラフィーとは電子写真・複製技術のこと。1960年頃始まった
新たな手法を手に入れた美術家たちの試みが面白いし楽しそう、野村仁とか河口龍夫とか
高松次郎の「この七つの文字」「THESE THREE WORDS」も展示されていた
初めてゼログラフィーを作品に用いたのはブルーノ・ムナーリだと知ってへぇと思った
ご多分に漏れず私はムナーリが大好き
Xerographieは非常に先駆的な作品だったんだな

全体を通してベンヤミンの言葉を引きつつ、説明が丁寧でコレクションが網羅的という印象
アウラ、ダダ、バウハウス、シュルレアリズム、などなんとなく言葉は知っているがよくわかっていない、美術史の流れを体系的に把握しているわけではないという人が行くと理解が深まって良いと思う。
ベンヤミンが言及した美術や写真の実作品を、考察や発言の引用と共に展示している
女性作家に焦点を当てたコレクション展の方も良かった。
熊井恭子のステンレスチール線による立体造形が印象的
写真の展示室ではスタイケンやカニンガムの写真の他にマヤ・デレンの実験映画『午後の編目』が上映されていた



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