上野公園は若冲展の激混みがとにかく目立っていたが、 カラヴァッジョ展はそこそこな混み具合だった。
若冲展がしょっちゅう行われていることを考えると、 これだけまとまった数のカラヴァッジョの作品が観られる展示の方 が混んで良さそうなものなのに。
しかも今回の展示では日本初公開の作品がある。
今回の展示の目玉は《法悦のマグダラのマリア》という作品で、 長い間行方不明で2014年に発見されたという。
カラヴァッジョが殺人の罪を犯してローマを逃亡した1606年の 夏に描かれたもので、その4年後にカラヴァッジョは死んだ。 死んだときの持ち物の一つがこの絵で、 サインが入っていないために本当にカラヴァッジョの真筆であるか わからなったが、研究の結果これは真筆である! と決まったのだそう。
その絵が今回の展示で世界初公開された。
人を殺した後に宗教画を描くのはどんな気持ちだろう。
でも超神聖な気持ちで描いたわけではないと思う、 むしろ世俗的な気持ち。
「法悦の」って正確にはどういう意味かなと思って辞書を引いた。 たぶん「超…最高です!」みたいな意味だと思うんだけど。
そしたら「仏教の教えを聞き、または味わって喜ぶこと。 転じてなんらかの状態において生じる恍惚感をもいう。」だって。 仏教?
カラヴァッジョ《法悦のマグダラのマリア》 |
深い闇の中で白くはだけた肩、半開きの口、薄く開かれた白目、 弛緩しきった表情。 カラヴァッジョの描いたマグダラのマリアは神に救われて恍惚… というよりは性的なエクスタシーに達しているように見えた
というか色を失って死にかけているようにすら見える。
諸説あるけど、 聖書においてマグダラのマリアはキリストの死と復活を見届ける証 人だとか、悔悛する罪深き女といった役回りで、 娼婦だったとかイエスと結婚していたとか色々と言われる女性なん だけど
今観てもセンセーショナルでドキドキする絵だな、 と思うので当時の人が観たらヒャー(チラッ) という感じだったのではと想像した
人を殺さないと描けない絵だ、とかも言われている。
カラヴァッジョ《メドゥーサ》 |
あと楯にメドゥーサの生首が描いてあるのも観た。 ウオーッという感じ。
メドゥーサはどこ見てるのかな。でも目が合うと石になっちゃ
メドゥーサはどこ見てるのかな。でも目が合うと石になっちゃ
他にも斬首をテーマにした絵がたくさん展示してあった。 ホロフェルネスの首を斬るユディトとか。 ゴリアテの首を持つダビデとか。
挟まれちゃってアウチ!みたいな絵とか、自分に恋しちゃったナルキッソスの絵とかもよかったな〜
今までに何度もナルキッソスの話を見聞きしたけど、水面に映った自分に恋?そんな笑と思っていたけど、マジ恋しちゃった感が出ていてよかった。
半開きの口、抱こうとして差し入れる手。本当に気づいていない。自分が恋している相手が自分だということに。
カラヴァッジョ《メドゥーサ》 |
カラヴァッジョのフォロワーのことをカラヴァジェスキというらし い。
今回の展示だって、 展示されている絵の全てがカラヴァッジョによる作品というわけで はなく、大半はカラヴァジェスキにおる作品だった。 それでもこんなに沢山のカラヴァッジョの作品が集まるのはすごい ことらしい。 イタリアの美術館でもこんなに一度に観られないとか。
カラヴァジェスキだけどカラヴァッジョのこと嫌いという人( ジョバンニ・バリオーネ)もいるらしいので複雑だ
バリオーネはカラヴァッジョのこと嫌いすぎて訴えたりもしていた のに、 後世の人にはカラヴァジェスキとくくられてしまってちょっとかわ いそう。
アルテミジア・ジェンティレスキ《悔悛のマグダラのマリア》 |
カラヴァッジョのマリアと共に展示されていた、このマグダラのマリアは完全にエッチでしょ。キリストに救われて云々とかじゃない、エッチ目的で描いたでしょ。と思ったんだけど、これはアルテミジア・ジェンティレスキという有名なカラヴァジェスキの女性画家が描いた絵だった。
当時、女性の画家というだけでとても珍しかったらしい。
この人の描いたホロフェルネスの首を斬るユディトを以前観たことがあって、すごい怖い…と思ったんだけど、後にジェンダー研究の本で男性社会への怒りを表現したと書いてあるのを読んで思わずなるほど…と思ってしまった。
展示の終わりにあったエッケ・ホモ、この人を見よ。 というタイトルの絵を観た瞬間に「この人を見よ~この人こそ~」 という讃美歌が頭の中で鳴り響いて止まらなくなった。人となりたる、活ける神なれ。
昔聖書を読んだり牧師の説教を聞いたりしたことは、 キリスト教信仰をテーマとする美術作品を理解するのに役に立って いると思う
聖書におけるエピソードを知っているのと知らないのとでは大きく 違うと思う。
常設展を観たら、建築模型が展示されていて感慨深かったです。
私も作ったことがある。
あと図面をトレースしたこともある。
版画の展示室では"描かれた夢解釈――醒めて見るゆめ/ 眠って見るうつつ”という展示をやっていた。
いつも通りアルブレヒト・デューラーとかオディロン・ルドンとか
秋にクラーナハ展をやるという。サブタイトルが奮っていて、 クラーナハ、500年後の誘惑。
誘惑されたくない?500年の時を経て。
本のタイトル、リズムがよくて言いたくなる
もっと知りたいカラヴァッジョ
そして言うともっと知りたくなる
本のタイトル、リズムがよくて言いたくなる
もっと知りたいカラヴァッジョ
そして言うともっと知りたくなる